更年期になると下腹が出るのは、年齢のせい?

ホルモンだけでは説明できない、本当の理由。

「最近、体重は変わらないのにお腹だけが出てきた。」

「若い頃はすぐ戻ったのに、今は何をしてもウエストが細くならない。」

40代後半から50代になると、多くの女性がこのような変化を感じます。

すると、多くの方はこう思います。

「更年期だから仕方ない。」
「女性ホルモンが減ったから。」

もちろん、それは間違いではありません。

閉経に伴って女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、脂肪はお尻や太ももよりも、お腹周りにつきやすくなります。また、筋肉量や骨密度、皮膚や結合組織の質も少しずつ変化していきます。

しかし、ここで一つ疑問があります。

同じ年代でも、お腹がほとんど変わらない人と、大きく変化する人がいます。

この違いは何でしょうか。

私は、その答えは「身体の使い方」にあると考えています。

お腹は「筋肉」で支えられています

私たちは「お腹が出る=脂肪」と考えがちです。

もちろん脂肪も関係しています。

しかし実際には、お腹の形を決めているのは脂肪だけではありません。

お腹の奥には、腹横筋(ふくおうきん)という筋肉があります。

腹横筋は、お腹を360度包み込むように存在し、「天然のコルセット」とも呼ばれています。

さらに腹斜筋、横隔膜、骨盤底筋、多裂筋などと協力しながら、体幹全体を安定させています。

つまり、お腹は「筋肉の壁」で支えられているのです。

この支える力が弱くなると、脂肪が増えていなくても、お腹は前へ押し出されやすくなります。

更年期は「筋肉」と「姿勢」が変わる時期

更年期では、筋肉量が減少しやすくなることが多くの研究で報告されています。

さらに、加齢やエストロゲンの低下に伴い、筋膜や結合組織の弾力性も少しずつ低下していきます。

その結果、お腹を支える力が以前より弱くなり、体幹の安定性も低下しやすくなります。

すると身体は無意識に別の場所で支えようとします。

その代表が腰です。

下腹が出る人は、反り腰になっていませんか?

スタジオで多くのお客様を見ていると、下腹が気になる方の多くに共通点があります。

・腰が反っている

・肋骨が開いている

・胸郭が硬い

・呼吸が浅い

・お腹に力を入れようとすると胸が持ち上がる

こうした姿勢では、腹横筋が十分に働きにくくなります。

すると腰の筋肉が頑張り過ぎてしまい、腰はさらに反ります。

腰が反ると、お腹の前面は引き伸ばされ、内臓は前方・下方へ押し出されやすくなります。

その結果、「下腹だけがぽっこり出る」という状態になりやすいのです。

つまり、

下腹が出ている原因は、お腹だけではなく、姿勢や身体全体のバランスにもあるということです。

呼吸は、お腹を鍛えるトレーニングでもあります

「腹筋を鍛えましょう。」

そう聞くと、多くの方は腹筋運動を思い浮かべます。

しかし、お腹を支える腹横筋は、一般的な腹筋運動だけでは十分に働きません。

腹横筋は呼吸、とくに息を吐くときに自然に活動しやすくなる筋肉です。

もちろん、呼吸だけで腹横筋が鍛えられるわけではありません。

しかし、呼吸を意識しながら姿勢を整え、身体をコントロールして動くことで、腹横筋・横隔膜・骨盤底筋が協調して働きやすくなります。

これがピラティスで呼吸を大切にする理由です。

呼吸は酸素を取り込むためだけではありません。

身体を安定させるためのスイッチでもあるのです。

腹筋運動より大切なこと

お腹を引き締めたいからといって、腹筋運動だけを繰り返しても、思うような結果が出ない方は少なくありません。

なぜなら、身体は部分ごとに動いているのではなく、全身がつながって働いているからです。

呼吸。

背骨。

胸郭。

骨盤。

股関節。

足。

これらが協調して働いて初めて、お腹も本来の役割を果たせます。

だから私は、お客様に「お腹を締めてください」とはあまり言いません。

まずは呼吸を感じること。

背骨が動くこと。

肋骨と骨盤が自然につながること。

その結果として、お腹は自然に働き始めます。

更年期だからこそ、身体は変えられる

嬉しいことに、筋肉は年齢に関係なく刺激に反応します。

閉経後の女性を対象とした研究でも、筋力トレーニングによって筋力や身体機能、体組成が改善することが数多く報告されています。

つまり、更年期は「衰える時期」ではなく、「身体の使い方を見直す時期」と考えることもできます。

身体は、何歳からでも学習します。

神経は新しい動きを覚えます。

筋肉は刺激に応えます。

姿勢は変わります。

呼吸も変わります。

だから、お腹の形も変わっていく可能性があります。

ピラティスが目指しているもの

ピラティスは、お腹をへこませる運動ではありません。

身体を部分ではなく、一つのシステムとして考えます。

呼吸が変われば、胸郭が変わる。

胸郭が変われば、背骨が動く。

背骨が動けば、骨盤が安定する。

骨盤が安定すれば、お腹が働く。

お腹が働けば、腰への負担が減る。

こうして、一つの変化が次の変化につながっていきます。

私は、これまで多くのお客様の身体を見てきました。

年齢は変えられません。

ホルモンも変えられません。

しかし、「身体の使い方」は変えられます。

そして、その変化は見た目だけではありません。

腰が楽になる。

歩くことが楽しくなる。

疲れにくくなる。

深く呼吸ができるようになる。

そんな変化こそ、本当の意味での健康ではないでしょうか。

更年期は、身体が終わる時期ではありません。

これからの人生を、もっと快適に、もっと自分らしく過ごすために、自分の身体と向き合う新しいスタートです。

年齢を理由に諦めるのではなく、身体にはまだ変わる力があることを、ぜひ知っていただきたいと思います。


参考文献

  • Sipilä S, et al. The role of physical activity and menopause on muscle health in women. Maturitas. 2020.
  • Isenmann E, et al. Resistance training alters body composition in middle-aged women depending on menopause.BMC Women's Health. 2023.
  • American College of Sports Medicine. ACSM Position Stand: Exercise and Physical Activity for Older Adults.
  • American Physical Therapy Association. Clinical Practice Guideline for Pelvic Floor and Core Function.
  • Hodges PW, Gandevia SC. Activation of the human diaphragm during a repetitive postural task. Journal of Physiology.
  • Hodges PW, Richardson CA. Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb.Physical Therapy.

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