「下腹だけが出る」のは腹筋が弱いから?実はもっと複雑なお話です。

「体重はそんなに増えていないのに、下腹だけが出てきた…」
「腹筋を頑張っているのに、お腹がへこまない。」
そんなお悩みを、特に女性のお客様からよくお聞きします。
SNSでは、
「腹横筋が弱いからです。」
「腸腰筋が硬いからです。」
「骨盤が前に傾いているからです。」
そんな説明を目にすることも多いですね。
もちろん、それらは関係していることがあります。
しかし、実際の身体はそれほど単純ではありません。

お腹が出る原因は一つではありません
最近の研究では、お腹が前に出る原因は一つではなく、いくつもの要素が重なって起こることが分かっています。
例えば…
- 腹横筋など深層の筋肉がうまく働いていない
- 呼吸が浅く、体幹が十分に使えていない
- 骨盤や背骨のバランスが崩れている
- 骨盤底筋の機能が低下している
- 妊娠・出産による身体の変化
- 更年期によるホルモンの変化
- 筋力低下や姿勢のクセ
- 便秘やお腹の張り
- 皮下脂肪や内臓脂肪
など、本当にさまざまです。
だから、「腹筋だけ鍛えれば解決する」というものではありません。
実は「呼吸」がとても大切です
ピラティスでは、お腹を引き締める前に「呼吸」を大切にします。
なぜでしょうか。
私たちの身体には、
- 横隔膜
- 腹横筋
- 骨盤底筋
- 多裂筋
という、身体を内側から支える筋肉があります。
これらは呼吸に合わせて協調して働いています。
つまり、
良い呼吸ができることが、体幹が自然に働く第一歩なのです。
だからピラティスでは、まず呼吸から始めます。
腹筋運動だけでは変わらない理由
「腹筋を毎日100回しています。」
という方でも、お腹が思うように変わらないことがあります。
腹筋運動で鍛えられるのは主に腹直筋という筋肉です。
もちろん大切な筋肉ですが、お腹を支える役割はそれだけではありません。
身体は、
呼吸
姿勢
骨盤
背骨
股関節
これらが協力して初めて、効率よく支えられるようになります。
ピラティスが目指していること
ピラティスは「お腹を締める運動」ではありません。
身体全体がバランスよく働ける状態をつくることを目的としています。
だから、
「この筋肉だけ鍛えましょう。」
という考え方ではなく、
身体全体が協調して動くことを大切にしています。
すると結果として、
- 姿勢が整う
- 呼吸がしやすくなる
- 腰への負担が減る
- 下腹が引き上がりやすくなる
そんな変化が少しずつ現れてきます。

身体には「一つの原因」「一つの答え」はありません
私は長年ピラティスを指導してきましたが、同じ「ぽっこりお腹」でも原因は一人ひとり違います。
ある方は呼吸。
ある方は姿勢。
ある方は骨盤の使い方。
またある方は出産後の影響。
だからこそ、誰にでも同じエクササイズを行うのではなく、その方の身体を見て、その方に合った方法を選ぶことが大切だと思っています。
身体はとてもよくできています。
一つの筋肉だけではなく、全身がつながり、支え合っています。
だからこそ、ピラティスでは身体全体を見ながら整えていくのです。
それが、遠回りのようでいて、実は一番自然で、一番身体に優しい方法なのではないでしょうか。
参考文献(一部)
- Hodges PW, Richardson CA. Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain.Spine. 1996.
- Hodges PW, Gandevia SC. Activation of the human diaphragm during postural tasks. Journal of Physiology. 2000.
- Cholewicki J, McGill SM. Mechanical stability of the in vivo lumbar spine. Clinical Biomechanics. 1996.
- American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period.
- North American Menopause Society (NAMS). 更年期における体組成・脂肪分布に関するポジションステートメント。

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