人は、なぜ変われないのか。― ピラティスが教えてくれたこと ―

ピラティスを指導していると、いつも感じることがあります。

人は、理解していても、なかなか変われないということです。

養成コースでも、

「チャートの順番を守りましょう。」

「『〜しながら』という言葉を減らしましょう。」

「コアを使って、骨盤底筋を引き上げて、という抽象的なキューイングばかりにならないようにしましょう。」

そう伝えると、多くの受講生は「なるほど」と理解してくれます。

でも、実際に指導を始めると、気づけば以前と同じ順番になり、同じ言葉を使っています。

私の子どもも同じです。

「立ってシャワーをしないでね。」

何度伝えても、気づけばまた立っています。

決して話を聞いていないわけではありません。

理解はしています。

でも、行動になると、今までの習慣に戻ってしまうのです。

実は、私自身もそうでした。

子育て中、私はいつも子どもを右腰に乗せて抱っこしていました。

何年も毎日のように続けてきた結果、子育てが終わった今でも、無意識に右腰へ力が入ります。

「左右均等に立ちましょう。」

そう自分に言い聞かせても、身体は長年覚えてきた動きを選びます。

頭では分かっているのに、身体は変わらない。

これは、意志が弱いからではありません。

身体も脳も、「慣れた方法」を選ぶようにできているからです。

だから私は最近、変化には順番があるのだと考えています。

まず必要なのは、気づくことです。

「また右腰に乗っている。」

「また『〜しながら』と言ってしまった。」

「またチャートを変えてしまった。」

「また立ってシャワーをしている。」

この「またやってしまった」という気づきがなければ、変えることはできません。

そして次に大切なのは、完璧を目指さないことです。

最初から毎回できる人はいません。

まずは、5回に1回できれば十分

行動する前に一度立ち止まり、

「今回は違うやり方を選んでみよう。」

そう考える時間をつくること。

その小さな成功を何度も積み重ねることで、新しい動きや新しい言葉が少しずつ自分のものになっていきます。

そして、もっと大切なことがあります。

それは、その行動を初めて学ぶ時です。

最初に、

「なぜその動きをするのか。」

「どんな目的があるのか。」

「どうやればできるのか。」

この理屈と体験が結びついていると、その後に身につく習慣の質は大きく変わります。

ピラティスにも最初に出会う指導者(トレーナー)の役割はとても重要なのかもしれません。

だから私は、養成コースでも、お客様へのレッスンでも、形だけを教えることはしたくありません。

理屈を理解し、自分の身体で感じ、その経験を積み重ねること。

それが、本当の意味での学びにつながると思っています。

私は、ピラティスとは「正しい動きを教えること」ではないと考えています。

今まで無意識に繰り返してきた身体の使い方に気づき、新しい選択肢を身体に覚えてもらうこと。

そのためには、一度できたから終わりではありません。

何度も感じ、何度も試し、何度も失敗しながら、新しい神経回路を育てていく。

それが、身体を変えるということです。

だから私は、お客様が同じ癖を繰り返しても、養成生が何度も同じ間違いをしても、以前ほど焦らなくなりました。

人は、理解したから変わるのではありません。

気づきを繰り返し、新しい経験を積み重ねた時に、初めて変わり始めます。

そして、その変化を支えることこそが、ピラティス指導者の大切な役割なのだと、私は思っています。

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