シンプルだからこそ、身体が見える。― トーコレクター&フットコレクターWSを終えて

昨日、「クラシカルピラティス アパラタス研究シリーズ」の第2回として、トーコレクター&フットコレクターのワークショップを開催しました。
ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。
今回は5時間かけて、この2つの小さな器具を詳しく分析しながら、
「何のためにこの器具があるのか」
「実際に身体には何が起きているのか」
「そして、それをレッスンにどうつなげていくのか」
というところまで、一緒に考えていきました。
……そして、終わってから気づきました。
写真を一枚も撮っていませんでした(笑)
5時間、話して、動いて、観察して、考えて……すっかり忘れていました。
次回はちゃんと撮りたいと思います。

ピラティスは「エクササイズをすること」だけではない
今回のWSで、最初に皆さんにお伝えしたかったことがあります。
それは、
ピラティスは、エクササイズの形だけを学ぶものではない
ということです。
「このエクササイズはこうする」
「この器具はこう使う」
もちろん、それを知ることも必要です。
でも、もっと大切なのは、
なぜ、それをするのか。
何を身体に経験させたいのか。
そして、目の前の人にとって、それが本当に必要なのか。
ということだと思っています。
私はコンテンポラリーのピラティスも、クラシカルピラティスも学んできました。
それぞれに考え方やアプローチの違いがあります。
でも、どちらか一方だけが「正しい」ということではないと思っています。
それぞれの方法は、それぞれの背景や考え方の中から生まれたもの。
そして最終的には、
「目の前のお客様の身体を、どうすればより良い方向へ導けるのか」
そこへ向かっているのだと思います。
だからこそ、指導者に必要なのは「正解を覚えること」以上に、選択する力なのではないでしょうか。
「これをすれば良くなる」とは限らない
同じエクササイズをしても、全員に同じ反応が起こるわけではありません。
骨格も違えば、足部の形も違う。
関節の可動性も違う。
筋力、感覚、これまでの運動経験、日常生活で身についた動作パターンも違います。
つまり、身体には大きな個体差があります。
だから、
「この人にはこれをすれば良くなる」
と最初から決めてしまうのではなく、
やってみる。
反応を見る。
もう一度観察する。
必要なら変える。
この繰り返しが大切です。
エクササイズを「処方」のように当てはめるのではなく、身体とのやり取りの中から、その人に合うものを探していく。
私は、それもピラティス指導の大切な部分だと思っています。
シンプルだからこそ、難しい
今回扱ったトーコレクターとフットコレクターは、とてもシンプルな器具です。
フットコレクターを見れば、
「踏むんだな」
と、なんとなく想像できます。
トーコレクターなら、
「足趾にかけて引っ張るんだな」
と分かります。
リフォーマーやキャデラックのように、初めて見る人が「これはどうやって使うの?」と思うような複雑さはありません。
ところが、
シンプルだから簡単なのかというと、実はそうではありません。
シンプルな動きほど、その人がもともと持っている身体の使い方が、そのまま現れやすいからです。
足趾をどう使うのか。
足底のどこで力を受け取っているのか。
足関節が動くとき、踵や前足部はどう反応しているのか。
荷重が変化したとき、内側や外側へ逃げていないか。
そして、その変化が膝、股関節、骨盤、脊柱へどう伝わっているのか。
一見すると「踏むだけ」「引くだけ」。
でも、丁寧に身体を見ていくと、たくさんの情報がそこにあります。
だから私は、
シンプルなエクササイズ=簡単なエクササイズではない
と思っています。
足だけを見ない ― Whole Bodyとして考える
もう一つ、今回とても大切にしたのが、
足だけで終わらせないこと
です。
トーコレクターやフットコレクターを使うと、どうしても、
「足趾を強くする」
「足のアーチをつくる」
「足関節を正しく動かす」
というところに意識が向きやすくなります。
もちろん、それらも重要です。
でも、ピラティスとして考えるなら、もう少し先を見たい。
足部は床との接点であり、立位や歩行において身体が外界と力をやり取りする重要な場所です。
そこで生じた力や感覚は、足だけで完結するものではありません。
下腿、膝、股関節、骨盤、脊柱へとつながっていきます。
だから今回も、
「足がどう動いたか」だけではなく、
「それによって身体全体がどう変わったか」
を感じてもらいました。
これが、私が大切にしている**Whole Body(全身性)**の考え方です。
レッスンの最初に使う意味
私は実際のレッスンでも、こうした小さな器具を最初に使うことがあります。
たとえば、フットコレクターでシンプルな動きを行ってからリフォーマーへ移る。
すると、その後のFootworkや立位でのエクササイズなどが、スムーズになることがあります。
これは「フットコレクターをやれば必ずこうなる」という意味ではありません。
でも、足部に荷重や動き、支持の感覚を入力したあとに全身運動へ移ることで、クライアント自身がそれまでとは違う身体の使い方を見つけやすくなることがあります。
つまり、小さな器具で行ったことを、
その器具の中だけで終わらせない。
次のエクササイズへつなげる。
さらに立位や歩行、日常動作へつなげる。
そこまで考えて初めて、「なぜこの器具を使ったのか」という意味が生まれてくるのではないでしょうか。
足は、すぐには変わらない。だからこそ取り組む
足部は長年の生活習慣や姿勢、歩行、靴、過去の怪我など、さまざまな影響を受けています。
ですから、一度のエクササイズですべてが変わるものではありません。
でも、だからこそ取り組む価値があります。
そして、もう一つ大切なのが感覚入力です。
「自分はどこで踏んでいるのか」
「どの指が使えているのか」
「どこに力が逃げているのか」
「足が変わると、身体の上の方はどう感じるのか」
そうしたことに気づくこと自体が、身体を変えていくための大切な第一歩になります。
ただ筋肉を強くするのではなく、
感じる → 動く → 変化を確認する。
この循環を繰り返していく。
そのために、トーコレクターやフットコレクターのようなシンプルな器具は、とても興味深い存在だと思います。
器具を学ぶことは、身体を見る力を育てること
今回、5時間かけて小さな2つの器具を学びました。
エクササイズの数だけを考えれば、もっと短時間でも説明できるかもしれません。
でも、今回の目的は「使い方を覚えること」だけではありませんでした。
なぜ、この器具なのか。
何を観察するのか。
身体に何が起きたのか。
そこから次に何を選択するのか。
それを、自分自身の身体を通して考えてもらうこと。
私はそこに時間をかけたかったのです。
器具の使い方をたくさん知っていることと、器具を使って身体を見られることは、少し違います。
ピラティスにはたくさんのエクササイズがあります。
でも、エクササイズを増やすことだけが指導の幅を広げるわけではありません。
むしろ一つのシンプルな動きから、
どれだけ身体を観察し、感じ、考え、次の選択につなげられるか。
その力が、指導の深さにつながっていくのだと思います。
今回のトーコレクター&フットコレクターWSも、器具の勉強でありながら、最終的には**「身体を見る力を育てる時間」**になったのではないかと思います。
ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。
ぜひ今回の学びを、器具の中だけで終わらせず、リフォーマーやキャデラック、マット、そして目の前のお客様の身体へとつなげてみてください。
次回は、ラダーバレル。
また一つの器具をじっくり掘り下げながら、そこから身体全体をどう見るのかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
そして次回こそ、写真を忘れずに撮ります(笑)。
まずは体験!













