ペディポールは、なぜピラティス指導に必要なのか

ペディポールは、なぜピラティス指導に必要なのか

― Risa Mathews先生から学ぶアパラタスの役割
クラシカルピラティスのアパラタスの中に、**Pedi Pole(ペディポール/Ped-O-Pull)**があります。
リフォーマーやキャデラック、チェアに比べると、とてもシンプルな器具です。
私自身、クラシカルピラティスを学ぶ中で、改めてこのシンプルな器具の奥深さを感じています。
私がクラシカルピラティスを学んでいる先生の一人、Risa Mathews(リサ・マシューズ)先生は、カナダ・バンクーバーにあるクラシカルピラティススタジオ「Boditree Pilates and Healing」のオーナーです。
Risa先生は、ペディポールについて、
高齢者や身体にさまざまな制限のあるクライアントにとって、非常に価値のあるアパラタス
だと述べています。
そして、Risa先生のスタジオでは、ほとんどすべてのクライアントが日常的にペディポールを使用しているそうです。
なぜ、これほどシンプルな器具が重要なのでしょうか。
「難しいエクササイズができること」がピラティスの目的ではない
クラシカルピラティスを学んでいると、どうしてもフルレパートリーや難しいエクササイズに目が向きやすくなります。
「このエクササイズができるようになった」
「ここまでレパートリーを習得した」
もちろん、それも学びの一つです。
しかし、私たち指導者が本当に考えなければならないのは、
目の前のお客様にとって、今、何が必要なのか。
ということではないでしょうか。
Risa先生も、クラシカルピラティスの教育では華やかなエクササイズや高度なレパートリーに目が向きがちだけれど、ペディポールの力はそこにはない、と書いています。
ペディポールは決して派手な器具ではありません。
けれども、だからこそ身体の基本的な機能を丁寧に見ることができます。

ペディポールで何を見るのか
Risa先生は、ペディポールによって期待できることとして、次のような点を挙げています。
- 呼吸のコンディショニング
- 頸椎への圧迫を減らし、伸びを引き出すこと
- 立位での脊柱の強さを育てること
- 呼吸と腕の動きを協調させ、Powerhouseへつなげること
- 足から立位姿勢とバランスを整えること
- 骨盤底への働きかけ
- 頭部・頸部・肩甲帯の強化とアライメント
- 呼吸機能への働きかけ
ここで私が特に大切だと思うのは、
「立った状態で身体全体を見ることができる」
という点です。
私たちは最終的には、日常生活の中で立ち、歩き、動きます。
リフォーマーで身体がうまく使えるようになったとしても、それがそのまま立位での身体の使い方につながるとは限りません。
そこでペディポールが、非常に興味深い役割を果たします。

スプリングが身体を教えてくれる
ペディポールでは、立位でスプリングを扱います。
リフォーマーのようにキャリッジが動くわけではありません。
そのため、身体とスプリングとの関係がとても直接的です。
腕だけでスプリングを引こうとするとどうなるのか。
肩が上がっていないか。
頭が前に出ていないか。
胸郭が前に押し出されていないか。
骨盤はどうなっているのか。
足の裏で床を感じられているのか。
呼吸は続いているのか。
そして、その動きがPowerhouseとつながっているのか。
とてもシンプルな動きだからこそ、身体の中で起こっていることが見えてきます。
これは指導者にとって、とても重要な「観察」の機会でもあります。

高齢のお客様にこそ「できた」という経験を
Risa先生の記事の中で、私がとても共感したのが、
ペディポールがクライアントの自信につながる
という考え方です。
高齢のお客様や運動経験の少ない方、身体に何らかの制限がある方に、最初から複雑なエクササイズを提供しても、うまく身体をコントロールできないことがあります。
「できない」
「怖い」
「私には難しい」
そんな経験が続けば、運動そのものへの自信を失ってしまうこともあります。
ペディポールは、その方が今いる場所から始めることができます。
そして繰り返す中で、
「前より安定して立てる」
「呼吸しやすくなった」
「肩が楽になった」
「姿勢が変わった」
という小さな変化を本人が感じることができます。
私は、ここがとても大切だと思います。
ピラティスは、できないことを見せるためのものではありません。
その人自身が身体の可能性を感じるためのもの。
そして、その経験が「もう少しやってみたい」という気持ちにつながっていくのではないでしょうか。
アパラタスは単独で存在しているわけではない
Risa先生は、ペディポールについて非常に印象的な表現をしています。
“a glue that holds the Classical Pilates system together”
クラシカルピラティスのシステム全体をつなぐ「接着剤」のような存在、という意味です。
私は、この言葉がとても好きです。
クラシカルピラティスには、
リフォーマー、キャデラック、チェア、バレル、アームチェア、ペディポール、フットコレクター、トーコレクター……
さまざまなアパラタスがあります。
けれど、それぞれを「別々の器具」として考えてしまうと、ピラティスのシステムは見えにくくなります。
リフォーマーで学んだことをチェアへ。
チェアで感じたことをペディポールへ。
そして最終的には、何も器具のない立位や歩行へ。
一つのアパラタスで学んだ身体の使い方を、別の環境でも再現できるようにしていく。
そこに、クラシカルピラティスのシステムとしての面白さがあるのだと思います。

指導者として「何をするか」より「なぜするか」
私は、たくさんのエクササイズを知ることだけが指導者としての成長ではないと思っています。
同じエクササイズでも、
誰に行うのか。
何を見ているのか。
なぜ、このアパラタスを選んだのか。
このエクササイズの次に何をするのか。
そして、終わった後に何が変わったのか。
そこまで考えることで、初めて「プログラム」になっていきます。
ペディポールのようなシンプルなアパラタスは、それを私たち指導者に改めて問いかけてくれるように思います。
華やかなエクササイズができることよりも、
その人が、より呼吸しやすく、より安定して立ち、より自信を持って自分の身体を使えるようになること。
そのために、どのアパラタスを、どのタイミングで使うのか。
私自身もRisa先生からクラシカルピラティスを学びながら、レパートリーを増やすことだけではなく、アパラタス同士のつながり、そして目の前の人にどうつなげていくのかを、これからも深く学んでいきたいと思っています。
参考:Risa Mathews
“Why the Pilates Pedi Pole is a Must When Working with Seniors and Special Needs Clients”
GRATZ Pilates Resources, October 6, 2025Why the Pilates Pedi Pole is a Must When Working with Seniors and Special Needs ClientsAs such the Pedi Pole is a glue that holds the Classical Pilates system together, providing the elderly participant an opportunity to witness their improvementwww.gratzpilates.com
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