ピラティスの良いインストラクターとは?指導の質と養成で大切なこと

― エクササイズを教えることと、身体の動きを理解することの違い ―
ピラティスを始めようと思ったとき、どのようなインストラクターに教わりたいと思いますか?
資格をたくさん持っている先生でしょうか。
エクササイズが上手な先生でしょうか。
説明がわかりやしく、楽しくレッスンをしてくれる先生でしょうか。
もちろん、どれも大切な要素だと思います。
けれども、長年運動指導に携わり、現在はピラティスのパーソナルレッスンやインストラクター養成・研修を行う中で、私は「指導の質とは何だろう」と考えることが増えました。
特に最近感じているのは、ピラティスのエクササイズを教えられることと、お客様の身体の動きを理解して指導できることは、必ずしも同じではないということです。
今回は、これからピラティスを始めたい方、現在レッスンを受けている方、そしてピラティスインストラクターを目指している方にも、私なりの考えをお伝えしたいと思います。
エアロビクスからピラティスへ。運動指導で感じた違い
私はもともと、フィットネスインストラクターとして、長年エアロビクスを指導してきました。
音楽に合わせてダンスのステップを踏み、楽しく有酸素運動を行うレッスンです。
エアロビクスでは、インストラクター自身が動き続けます。
自分の身体を使って動きを見せ、お客様はそれを見ながら一緒に身体を動かします。
ですから、自分自身が動けること、そして動きをわかりやすく見せられることが、指導の大きな要素でした。
ただ、その頃から感じていたことがあります。
人気のあるインストラクターが、必ずしも身体や運動について最も豊富な知識を持っているわけではない、ということです。
お客様がレッスンに求めるものは、それぞれ違います。
身体を動かす楽しさ、ストレス解消、音楽の中で過ごす非日常の時間、人とのつながり。
そこには、運動の効果だけでは測れない価値がありました。
では、ピラティスはどうでしょうか。
ピラティスでも、楽しさや心地よさは大切です。
しかし、特にパーソナルレッスンでは、一人ひとりの身体の動きを観察し、その方に合ったエクササイズや指導方法を選ぶことが求められます。
そして、エアロビクスとの大きな違いは、インストラクター自身が一緒に動かなくても指導ができることです。
私は、この違いがピラティス指導者の専門性を考えるうえで、とても重要だと思っています。

ピラティスは、英語教育に似ている?
最近、ピラティスの指導は英語教育に似ているような気がしています。
英語を母語とする人は、自然に英語を話せます。
しかし、英語が話せることと、その言語の仕組みを理解して人に教えられることは、同じではありません。
反対に、英語の文法や教育方法を体系的に学んだ人は、ネイティブのような流暢さがなくても、英語をわかりやすく教えることができるでしょう。
ピラティスも同じです。
自分自身が難しいエクササイズをできるからといって、必ずしも他人に上手に教えられるわけではありません。
一方で、自分では高度なエクササイズができなくても、基本的な動きをわかりやすく、安全に指導できる人もいます。
それぞれに必要な能力があります。
ただし、英語を学ぶことと英語を教えることが違うように、ピラティスを学ぶことと、ピラティスの指導方法を覚えることにも違いがあるのではないでしょうか。
私は、ここを大切にしたいと思っています。
ピラティスの指導で、本当に大切なこと
例えば、ピラティスのレッスンで、お客様に脚を動かしていただくとします。
同じエクササイズを行っていても、ある方は骨盤が動いてしまうかもしれません。
別の方は、必要以上に身体を固めてしまうかもしれません。
また、動きの形は整っていても、意図した身体のコントロールができているとは限りません。
では、インストラクターはどうするのでしょうか。
まず、できているところと、うまくできていないところを観察します。
そして、何が原因なのかを考えます。
説明の仕方を変えてみる。
身体の位置を少し調整してみる。
別のエクササイズを試してみる。
その結果、お客様の動きがどう変わったのかを確認します。
変化があれば、なぜ変わったのかを考える。
変化がなければ、別の可能性を考える。
その日の状態や目的によっては、無理に修正を重ねず、今できているところを大切にする判断も必要でしょう。
ピラティス指導とは、決められたエクササイズを順番に教えるだけではなく、観察し、考え、判断し、修正することの繰り返しだと思います。
そして、その積み重ねが指導者の経験になっていくのではないでしょうか。
「上手に教えた」と「お客様ができた」は同じではない
これは、私自身も常に気をつけたいと思っていることです。
インストラクターが、エクササイズを正しく理解し、わかりやすく説明できたとします。
では、お客様もそのとおりに動けているのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
指導者が「上手に教えられた」と思っていても、お客様は違う動き方をしているかもしれません。
そもそも、指導者自身が、お客様の動きを正しく理解できていない可能性もあります。
だからこそ、自分の説明が正しかったかどうかだけでなく、お客様の身体に実際に何が起きているのかを見ることが必要になります。
レッスンがスムーズに進んだこと。
お客様が満足してくださったこと。
どちらも大切です。
けれども、それだけで指導のすべてを評価することはできないと思っています。

なぜ、ピラティスインストラクターは学び続ける必要があるのか
ピラティスには、体系化されたエクササイズや指導方法があります。
基本を学び、プログラムを覚えれば、レッスンを担当できるようになります。
それは、インストラクターとしての大切な第一歩です。
しかし、指導の仕事に慣れ、お客様も満足してくださるようになると、自分の指導を見直す必要性を感じにくくなることがあるかもしれません。
今の知識と技術で仕事ができる。
レッスンも問題なく進む。
そうすると、さらに学ぶことや、自分で練習することの優先順位が下がってしまう。
人間は誰でも、必要性を感じないことを続けるのは難しいものです。
しかし、お客様の身体は一人ひとり違います。
昨日うまくいった方法が、今日もうまくいくとは限りません。
同じように見える動きでも、その人がどのように身体を使っているかは違います。
だから私は、長く指導を続けていても、まだわからないこと、迷うことがあるのは自然なことだと考えています。
むしろ、知識や経験が増えたからこそ、今まで気づかなかったことが見えるようになる場合もあります。
自分の指導に疑問を持つことは、自信がないこととは違います。
自分が何を理解していて、何をまだ理解できていないのかを知ることも、専門家として大切な能力ではないでしょうか。
インストラクター自身がピラティスを練習する意味
ピラティス指導者は、自分自身が動かなくてもレッスンを行うことができます。
しかし、私はインストラクター自身がピラティスを実践し、学び続けることにも大きな意味があると思っています。
自分で動いてみると、理解していたつもりのエクササイズが思うようにできないことがあります。
他の先生から指導を受けると、自分では気づかなかった身体の使い方を発見することもあります。
こうした経験は、単にエクササイズの技術を高めるためだけではありません。
「なぜ、うまく動けないのだろう」
「どうすれば、もっと自然に動けるのだろう」
そんな疑問を、自分自身の身体を通して考えることができます。
そして、できなかったことが少しずつできるようになる喜びや、身体を変えていく難しさを実感することにもつながります。
私は、すべてのインストラクターが高度なエクササイズをできる必要はないと思います。
しかし、教える立場になっても、自分自身がピラティスを学ぶ人であり続けることは、大切にしたいと考えています。
良いピラティスインストラクターを選ぶには?
では、お客様はどのような先生を選べばよいのでしょうか。
資格や経験年数は、指導者を知るための参考になります。
しかし、それだけで自分に合った指導者かどうかを判断するのは難しいものです。
私がお客様に大切にしていただきたいのは、先生が自分の身体をどのように見てくれているか、ということです。
例えば、次のようなことです。
- 自分の身体の状態や目的について、話を聞いてくれるか。
- エクササイズの形だけでなく、実際の動きを観察してくれるか。
- うまくできないとき、別の方法を考えてくれるか。
- なぜそのエクササイズを行うのか、理解できるように説明してく
- 無理に動かすのではなく、その日の状態に合わせて調整してくれるか。
ピラティスには、すぐにできることもあれば、時間をかけて身につけていく動きもあります。
毎回すべてができる必要はありません。
大切なのは、指導者とお客様が身体の変化を確かめながら、少しずつ学びを積み重ねていくことだと思います。
ピラティスインストラクター養成で、何を学ぶべきか
これからピラティスインストラクターを目指す方にも、ぜひ考えていただきたいことがあります。
資格を取得することは、一つの目標になるでしょう。
エクササイズの名前や順番を覚えること、身体の構造や運動の原理を学ぶことも必要です。
しかし、それだけで指導が完成するわけではありません。
実際のレッスンでは、教科書どおりに動くお客様ばかりではないからです。
私は、ピラティスインストラクター養成において、次のような力を育てることが大切だと思います。
身体の動きを観察する力。
なぜその動きが起きているのかを考える力。
お客様に合わせて指導方法を選び、修正する力。
自分の判断を振り返り、学び続ける力。
そして、自分自身もピラティスを実践し、身体を通して理解を深めていくことです。
養成コースを選ぶ際にも、何種類のエクササイズを習得できるか、どの資格が取得できるかだけでなく、実際の指導練習や、観察・修正を学ぶ機会がどれほどあるのかを確認していただきたいと思います。
資格は学びの一つの節目です。
その先に続いていく指導者としての成長こそが、大切なのではないでしょうか。
私がピラティス指導と指導者教育で大切にしたいこと
私は長年、運動指導の仕事を続けてきました。
エアロビクスでは、音楽に合わせて大勢のお客様と身体を動かす楽しさを学びました。
ピラティスでは、一人ひとりの身体と向き合い、動きを観察し、その人に合った方法を考える難しさと面白さを感じています。
そして現在、指導者教育に携わる中で、改めて考えていることがあります。
それは、ピラティスを教えられる人を育てることと、ピラティスを考え続けられる指導者を育てることは、少し違うのではないかということです。
エクササイズを正しく伝えることは大切です。
でも、そこがゴールではないと思っています。
お客様の動きを見て、疑問を持つ。
自分の判断を振り返る。
わからないことがあれば、また学ぶ。
そして、次のレッスンに生かしていく。
私自身も、まだまだ学ぶことがあります。
だからこそ、ピラティスの指導は奥深く、面白いのだと思います。
ピラティスを始めるお客様には、自分の身体を知り、動くことの楽しさや変化を感じていただきたい。
これからインストラクターを目指す方には、資格を取ることだけをゴールにせず、長く学び続けられる指導者になっていただきたい。
そして、私自身も、指導することにも学ぶことにも、これからも真摯に向き合っていきたいと思っています。
ピラティスのレッスン・インストラクター養成について
当スタジオでは、ピラティスのパーソナルレッスンやインストラクター養成を通して、身体の動きを理解し、一人ひとりに向き合うことを大切にしています。
ピラティスを始めたい方も、指導者として学びたい方も、ぜひレッスンや養成コースのご案内をご覧ください。
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