流行としてのピラティスと、身体作りのためのピラティス

流行としてのピラティスと、体作りのためのピラティス

― ブームの先に残るものとは ―

ここ数年、ピラティスは世界的なブームとなり、日本でも「マシンピラティス」という言葉を日常的に耳にするようになりました。
身体に意識を向ける人が増えたこと自体は、とても前向きな流れだと感じています。

しかし同時に、長年ピラティスに関わってきた立場として、ひとつの疑問も生まれます。

今、私たちが触れているピラティスは
「流行としてのピラティス」なのか、
それとも「身体作りのためのピラティス」なのか。

この違いは、見た目以上に大きな意味を持っています。


ピラティスの本来の目的とは

ピラティスは、もともと
「短期間で結果を出す運動」でも
「見た目を作るためのメソッド」でもありません。

創始者である Joseph Pilates は、自身のメソッドを Contrology(コントロロジー)と呼び、次のように語っています。

“Physical fitness is the first requisite of happiness.”
(健全な身体こそが、幸福の第一条件である)

ここで語られている fitness は、
筋肉の大きさや消費カロリーではなく、

  • 身体を思い通りにコントロールできること
  • 無駄な緊張がなく、効率よく動けること
  • 年齢を重ねても自分の足で立ち、歩けること

そうした生きるための身体機能を指しています。


流行としてのピラティスの特徴

ブームとして広がるピラティスには、分かりやすい特徴があります。

  • 強度が高い
  • 動きが多い
  • 汗をかく
  • 「効いている感じ」がわかりやすい

これは、現代のニーズに合っているとも言えます。
忙しい日常の中で、短時間で達成感を得られることは魅力です。

ただし、流行には必ず期限があります。

強度や刺激を基準にすると、
身体は「慣れ」や「消耗」を起こしやすくなります。

結果として、
・ケガ
・慢性的な疲労
・続かない
という問題が起こることも少なくありません。


体作りのためのピラティスとは何か

一方で、体作りのためのピラティスは、少し地味です。

  • 呼吸を整える
  • 骨盤や背骨の配置を確認する
  • 足部から全身のつながりを見る
  • 小さな動きを丁寧に行う

見た目の派手さはありません。

しかし、身体の内側では確実に変化が起きています。

  • 姿勢が安定する
  • 無意識の力みが減る
  • 動作が滑らかになる
  • 日常動作が楽になる

これは「鍛える」というより、
身体を再教育するプロセスです。


なぜマシンが重要なのか

クラシカルピラティスにおいて、マシンは単なる負荷装置ではありません。

リフォーマー、キャデラック、チェア、バレルなどの器具は、

  • 正しい方向へ身体を導く
  • 動きへのフィードバックを教えてくれる
  • 使いすぎている部分と使えていない部分を明確にする

いわば、身体からのフィードバック装置です。

これにより、
「頑張る」よりも
「正しく使う」感覚が育っていきます。


年齢を重ねるほど価値が出るピラティス

私は現在58歳です。

若い頃よりも、
今の方が身体の安定感があります。

それは、
強度を追い求めてきたからではなく、
身体の仕組みを理解し、丁寧に使ってきたからだと感じています。

体作りのピラティスは、

  • 若い人のためだけのものではない
  • 年齢を理由に諦めるものでもない
  • むしろ、年齢を重ねてからこそ必要なもの

です。


ブームの先に残るもの

流行は、その入り口としてとても優秀です。

でも、そこで終わるか、
そこから深めるかで、未来は大きく変わります。

ピラティスが
「一時的な運動」になるのか、
「一生付き合える身体の学び」になるのか。

その分かれ道は、
体作りという視点を持てるかどうかにあります。


おわりに

ピラティスは、消費するものではありません。
育てていくものです。

静かに、丁寧に、時間をかけて。

その積み重ねが、
10年後、20年後の身体を支えてくれます。

流行のその先に、
本当のピラティスがあることを、
私は伝え続けたいと思っています。

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