ピラティスの広がりと、今思うこと

ピラティスの広がりと、今思うこと

11月に入り、空気がぐっと澄んできました。
スタジオにも、冬に近づいた深まった秋を感じさせる静けさが少しずつ漂っています。
この季節になると、自然と自分の歩みを振り返り、
そして来年のことを考える時間が増えていきます。
最近、どうしても心の中で感じることがあります。
それは、「ピラティスの世界が少しずつ変わってきている」ということ。
ここ数年で、ピラティスは一気に広まりました。
街を歩けば、あちこちに新しいスタジオの看板が見えます。
SNSでは美しいポーズが並び、「ピラティス=おしゃれ」「ピラティス=流行」という言葉が一人歩きしているようにも感じます。
それ自体は悪いことではないのですが、どこか「ピラティスをやれば儲かる」「人が集まる」といった空気が広がっているのも確かです。
市場が広がることと、本質が広がりピラティスをする人が増えることは、必ずしも同じではありません。
ピラティスは、単なるエクササイズでも、美しい姿勢を作るためのメソッドでもない。
自分の身体を感じ取り、呼吸を通して、心と身体を整えていく——
そうした“内面に向かう静かな時間”が、ピラティスの本質にあると、価値を感じてもらえると私は思っています。
けれど、今の世の中では、その“静かな本質”がどんどん後ろに追いやられているように感じます。
「映える」ことや「効率」ばかりが重視され、
本当の意味での「気づき」や「変化」は、少しずつ見失われつつあるような気がするのです。
もちろん、お客様が喜び、身体が軽くなり、笑顔になってくださること。
それは何より嬉しいことです。
けれど、その笑顔の奥にある“自分自身への理解”や“感覚の深まり”を伝えていくことが、
私の使命でもあり、ピラティスの価値や魅力を仕事として続けてきた意味でもあります。
正直に言えば、最近は少し疲れることもあります。
どれだけ伝えても届かないように感じる瞬間があったり、
一人で立ち続けることの孤独を感じたり。
でも、だからこそ思うのです。
「一時的な流行よりも、長く残る本質を」——それを伝え、価値を届ける人が、どこかにいなければいけないと。

世の中の大きな流れを変えることはできません。
けれど、立ち止まって見守ることはできます。
流れに飲み込まれず、自分の足もとを見つめ直すこともできます。
今は、そういう時期なのかもしれません。
焦らず、比べず、ただ目の前のレッスンを大切にする。
その中で、出会った一人ひとりの変化を見つめ、寄り添うこと。
それが、私にできる“ピラティスの伝え方”だと思っています。
華やかなことは何もないけれど、
根っこを深く張るように、静かに続けていく。
そうすれば、いつかまた新しい芽が出る時がくる。
そんな風に、今は信じています。













