1934年の『Reader's Digest』に掲載されたジョセフ・ピラティス氏の言葉

1934年の『Reader's Digest』に掲載されたジョセフ・ピラティス氏の言葉
──「お腹を引っ込めなさい」が教える真の若さとは
先日、Facebookの「Joseph's Legacy - Pilates 100+」というグループで、とても興味深い投稿を見かけました。

それは、**1934年10月号の『Reader's Digest』**の目次ページの画像で、そこに “Cutting a Fine Figure(美しい体型を作る)” という記事が記載されていました。
このエッセイは当時の『Collier’s』という雑誌からの要約で、ジョセフ・ピラティス氏が54歳のときに取材された内容です。
記事の執筆者である Marie Beynon Ray 氏は、数年ぶりに再会した中年の女性の「若返った姿」に驚き、話を聞いたところ、その変化の理由が**「顔」ではなく「身体」**にあったこと、そしてその鍵が「ジム通い」だったというエピソードから記事を始めています。
このタイミングで、彼女はニューヨークの名医、Dr. Hansson(理学療法の権威)にも話を聞いており、彼の言葉が印象的です。
「若い身体は胸が広く腹部が引き締まっている。年をとるとそれが逆転する。
しかし、運動によってそれを防ぐことができる。
特に腹部の4層の筋肉は“天然のコルセット”であり、これがたるむことで体全体が崩れていく。」
実在のモデル:Joseph Pilates 氏
その後、彼女はピラティス氏本人に会います。トランクス姿の彼の身体はまるで20代。けれども実際は54歳。
「スポーツは健康全般にはよいが、歪みを正すには向かない。
矯正運動こそが、強く美しい若々しい身体を作る唯一の方法だ。
医師たちもその点を支持してくれている」と彼は語ります。
彼が繰り返したのは、たった一つの明快なアドバイス:
「Pull the abdomen in.(お腹を引っ込めなさい)」
ほとんどの人の体型の崩れは、「姿勢の悪さ」、特に骨盤が後傾し、頭が前に出て、胸が落ち、腹部が突き出すというパターンに集約されます。
そのすべての矯正に必要なのは、“お腹を引き込む”というシンプルな命令なのです。

ピラティス氏のすすめるエクササイズ
記事には、彼が紹介する具体的な運動も記されています。
● エクササイズ例:
- 仰向けに寝て、背骨全体を床につける努力をする。
肩・腕も床につけたまま、頭上へ伸ばす。 - ゆっくりと体を起こす。
足は床につけたまま膝を伸ばした状態で、腕を前に持ってきて、あごを胸につけるように。 - 座ったら、手をつま先に向けて伸ばす。
最終的には手首がつま先に、額が膝につくのを目指す。 - 同じ動きを逆再生するようにゆっくり戻る。
この一連の動きは、腹部を鍛え、背中の歪みを整え、姿勢全体を改善することができる。
彼はまた、「運動を始める前には医師に相談すること」「日々の動作こそが身体を作る」というメッセージも強調しています。
日常生活の中でできる矯正習慣
ピラティス氏は、特別な器具も場所も必要ないと述べています。日常のあらゆる場面が“練習の場”になるのです。
● 映画館、デスクワーク、食事中でも:
- 背中をまっすぐにして深く腰掛け、足を床にぴったりとつける。
- 数分ごとに「お腹を引っ込める」と意識して、それをできるだけ長く維持する。
● 歩いている時は:
- 店のショーウィンドウに映る自分の姿勢を見て、すぐに修正。
- 少しずつ引き込み時間を長くしていく。
● 電車を待つ間にも:
- 両足に均等に体重をかけ、つま先をやや外向きにして、腹部を引き込む。
- ゆっくり左右に体重を移動させながら、姿勢を保つ。
最後に:90年を経ても色褪せない教え
記事の締めくくりで、ピラティス氏はこう語ります。
「80歳になっても、膝を曲げずに手のひらで床を触れるべきだ。
それを目指して、今すぐ始めるのがいい。6か月の赤ん坊でも、60歳の大人でも。」
彼の教えは、「美しくなるため」だけでなく、自分自身の身体と向き合い、“本来の姿”を取り戻すためのメッセージでもあります。
現代の私たちが忘れがちな、「シンプルで本質的なこと」。
それが、90年前のこの一言にすべて詰まっているのかもしれません。
「お腹を引っ込めなさい(Pull your abdomen in)」
この言葉を、今日から何度でも思い出してみてください。
姿勢だけでなく、身体と心のあり方まで、少しずつ変わっていくはずです。