見た目の先にあるもの ― ピラティスが問いかける「本当の豊かさ」

ピラティスが「流行」になった今、もう一度考えたいこと

私が30数年前、エアロビクスインストラクターになったのは、フィットネス会社への就職がきっかけでした。
当時の現場には独特の雰囲気がありました。エアロビクスは流行の最前線で、華やかさがありました。
人気のあるインストラクターは、華があり、少しわがままでも許される。お客様に人気があればOK。
そんな空気の中で、私も働いていました。

ただその頃、まわりから「若いうちしかできない仕事」と言われたり、“ねえちゃん”扱いをされることに、
どこか違和感やもどかしさを感じていました。
もっと長く続けられる価値ある仕事にできないだろうか――そう真剣に考えていたことを今でも覚えています。


ピラティスとの出会い

そして数十年が経ち、出会ったのがピラティスでした。
それは、これまでの運動とはまったく異なるものでした。
身体を「鍛える」ではなく、「理解し、整える」。
動きの一つひとつに意味があり、意識が伴い、理論的な裏付けがある。
そして、その結果として確かな効果が感じられる。
「これは本物だ」と心から思いました。

しかし今、ピラティスが「流行」として注目を浴びるようになり、
その風景の中に、かつてのエアロビクスと似た構図を感じることがあります。
綺麗で華やか、SNSでも人気があり発信力も高い。
そうしたインストラクターが注目を集める時代になりました。
それ自体は、悪いことではありません。むしろ、ピラティスが広く知られるきっかけにもなっています。

けれど、ピラティスというメソッドは本来、もっと静かで、深く、自分自身と向き合うものです。


市場拡大と構造の変化

ピラティスがここまで広まった背景には、市場構造の変化があります。
もともとピラティスは、専門性の高いマシンと知識をもつ指導者によって提供される、高単価で限られた分野のものでした。
しかし近年では、マシンのOEM製造が進み、価格が下がったことで、多くの事業者が参入しやすくなりました。
このこと自体は、ピラティスをより多くの人が体験できるという点で、とても良いことです。

ただ、店舗の増加とともに「指導者の確保」が急務となり、
短期間でインストラクターを育成・輩出する流れが生まれました。
その結果、「技術や指導力の質」よりも「数」や「即戦力」が優先され、
“美しさ”や“華やかさ”といった別の価値観が前面に出るようになったのです。

マーケティング的にはそれは成功でした。
けれど、その流れの中で「ピラティス=見た目を整えるもの」というイメージが強まり、
“感覚の教育”や“内面の探究”という本来の価値が見えづらくなっているようにも感じます。

もちろん、今のインストラクターの中には熱心に学び続けている方も多くいます。
しかし、知識を増やすことと、感覚を磨き、それを伝える力を育てることは違います。
ピラティスとは、目に見える知識の積み重ねではなく、
「自分の知らない感覚」に気づき、それを育てていく学びです。

見ていると簡単そうな動きが、いざやってみると「ん?あれ?」とわからなくなる。
その“あれ?”こそが、ピラティスの核心。
思考ではなく、感覚の扉を開く――そこにこそ本当の面白さがあります。


ライフスタイルとしてのピラティス

ピラティスは、特別なイベントでも、非日常のアクティビティでもありません。
むしろ、生活の中に自然と溶け込む「日常の一部」であるべきだと思っています。
「ピラティスをすること」が目的ではなく、
それを通して内面を整え、心身を静かに鍛え、
その積み重ねが“日々の暮らしを少し心地よくする”――そんな、地味だけれど確かなもの。
ピラティスとは、まさにそうしたライフスタイルの中にあるものです。

もちろん、流行がきっかけでピラティスに出会う人が増えるのは素晴らしいことです。
「ピラティスをしている自分に価値を感じる」――それも大切な動機です。
ただ、その価値が“見た目”や“トレンド”だけに傾いてしまうと、
ピラティスは“本質のない安価な華やかさ”に変わってしまう危険もあります。

華やかで、安く、手軽――それだけでは、ピラティスは単なる消費型トレンドに過ぎません。
だからこそ、私たちは“続けることの美しさ”を伝えていきたいのです。
静かで、地味で、でも確かに自分を支えてくれる。
そんなライフスタイルとしてのピラティスを、これからも大切にしていきたいと思います。


ピラティスが「生き続ける」ために

ピラティスが流行で終わらず、これからも人々の中に根づいていくためには、
“伝える側”と“受ける側”の両方が、本質を見つめ続けることが大切です。

インストラクターは「技術」や「知識」だけでなく、
人の身体と心に寄り添う観察力・共感力を磨くこと。
そして、受ける側も「何ができるか」より、「どう感じるか」を大切にすること。

ピラティスは、本来とても人間的なメソッドです。
見た目や形ではなく、「意識」「感覚」「呼吸」「思考」。
そのすべてを使って、自分の中の静けさと強さを取り戻していくもの。

流行はいつか終わります。
けれど、ピラティスは“生きることそのもの”と結びついた学びであれば、終わりません。
それが、これからの時代に私たちが守り、伝えていくべき“本当のピラティス”なのだと思います。


スタジオピラティスリムーブでは、
一人ひとりの生活に寄り添う“本質的なピラティス”をお届けしています。
流行ではなく、あなた自身のために。
日常の中に静かに根づく、そんなピラティスを共に続けていきましょう。

まずは体験!

本格派マシンを使ったピラティスをしてみませんか?

ピラティス体験レッスン

スタジオピラティスリムーブは、完全予約制!
あなたのための あなただけのスタジオです。

運動が苦手な方でもマシンを使うことで、からだの補助的役割をしてくれ、「ものさし」となり正しい可動域の中で無理なくトレーニングすることが出来ます。

オンラインレッスンも体験できます

オンラインレッスン体験

お申込はこちらから

Instagram