ピラティスの「深い魅力」と、今なぜ日本で人気なのか

ピラティスの「深い魅力」と、今なぜ日本で人気なのか
ピラティスが“宙ぶらりん”だった時代
ジョセフ・ピラティスが亡くなった後、彼の提唱した「コントロロジー(ピラティス)」は、長い間ほとんど広まりませんでした。1960〜70年代、アメリカではジムやフィットネスが大流行し、産業として急成長していたにもかかわらず、ピラティスはその波に乗ることができなかったのです。
なぜでしょうか。
弟子たちは、商業的に大衆へ広げるのではなく、あえて「閉ざされた世界」としてピラティスを守ろうとしました。そこでは音楽も雑談もなく、ただ黙々と、リフォーマーやキャデラックに向き合い、静かに動きを積み重ねていく。外の喧騒から切り離され、自分自身と深く向き合うための「聖域」だったのです。

「ここに来ると、自分を取り戻せる」
当時スタジオを訪れた著者ジョン・スティールは、その空気に驚かされます。厳格で、雑音一つない環境。そこにいる人々は単なる運動をしているのではなく、まるで“儀式”に参加しているように見えたといいます。
ある女性に理由を尋ねたとき、彼女はこう答えました。
「ここに来ると、自分を取り戻せるから。」
この言葉こそが、ピラティスが持つ「深い魅力」を端的に表しています。体を鍛えるためだけではなく、姿勢や呼吸、心の在り方までも整えてくれる。スタジオで過ごす時間は、単なるフィットネス以上の意味を持っていたのです。
物から「経験」を買う時代へ
では、なぜ今になって日本でピラティスが急速に人気を得ているのでしょうか。
もちろん、海外セレブやK-POPアイドルの影響、チェーンスタジオの増加といった背景もあります。ですが、本質的な理由はもっと深いところにあります。
現代は、物があふれる時代です。欲しいものはすぐに手に入る。だからこそ人々は「物」ではなく「経験」に価値を求めています。車の宣伝も、性能より「家族との思い出」を前面に打ち出す時代。お金を使う対象が「心の豊かさ」や「心の安定」に移っているのです。
ピラティスはそのニーズにぴったりと合致しています。
マシンの上で体を動かしながら呼吸に集中する時間は、自分を整え、心を満たす“経験”そのものだからです。

考え方の成熟と分岐
さらに、インターネットの普及によって、人は「深く考えない」方向に流されやすくなっています。流行だと聞けば、そのまま信じる人も少なくありません。ですが一方で、自分の軸で本質を学び取りたいと願う層も確実に存在します。
ピラティスはまさにその“本質を求める人”に響くものです。単なる流行ではなく、「体と心と精神の統合」という普遍的な価値を体験できるからです。
深い魅力があるからこそ、生き残り、広がる
ピラティスは一度、商業の波に乗らずに忘れられかけました。けれども、守られ続けた純粋さが、今の時代にこそ人々を惹きつけています。
著者スティールはこう結びます。
「ここには深い魅力がある。だからこそ、この方法は生き残り、やがて広がっていくのだ。」
まさに今、日本での急激な広がりは、この“深い魅力”が社会の成熟したニーズと重なった結果だと言えるのではないでしょうか。
最後に
今の時代だからこそ、ピラティスは人々に必要とされているのだと思います。
表面的な自分を飾るのではなく、深い自分と向き合い、心と体を整える時間にお金を使う。それは新しい時代のお金の使い方であり、生き方そのものです。
そのために私は、これからもピラティスをさらに深く理解し続けたいと思います。そして、これまでピラティスを守ってきた先駆者たちの教えを学びながら、自分なりの考えも重ね、皆さまにお伝えしていきたいのです。
正直に言えば、競合スタジオの増加や価格競争に揺れる厳しい時代に入ったと感じています。迷いや不安がないわけではありません。
しかし、だからこそ私は自分の芯を大切にし、ピラティスの本質を、正直に、まっすぐに伝えていきたいと心から思っています。
