ピラティスマシン「リフォーマー」とは何か?

ピラティスマシン「リフォーマー」とは何か? 〜歴史・構造・進化、そして私たち指導者にできる選択〜

ピラティスの代表的なマシンとして知られる「リフォーマー(Reformer)」。
今では世界中のスタジオで使用され、ピラティスを学ぶ多くの方にとって馴染み深い器具となっていますが、その誕生の背景や構造、進化の過程についてはあまり語られることがありません。

今回は、指導者の立場から、そして実際にリフォーマーを日々使用している者として、リフォーマーの本質と魅力、さらには「どのように選び、どのように向き合うべきか」について考えてみたいと思います。


■ ユニバーサルリフォーマーの起源 〜ベッドから始まった発明〜

ジョセフ・ピラティス氏が開発した「ユニバーサルリフォーマー」は、文字通り“身体を改革する(reform)”ための装置として生まれました。
その起源は、簡易ベッドにスプリングを取り付け、負荷を調整しながら身体を鍛えるという、極めてシンプルでありながら革新的な発想にあります。

ピラティス氏は、怪我や病気で寝たきりの人でもリハビリができるようにと考え、ベッドの下にスプリングを設置し、それを引いて負荷とすることで、寝たままでも全身の筋肉を鍛えることができるように工夫しました。
さらにベッドの外側にレールや車輪を備えた可動式のキャリッジを設け、エクササイズのバリエーションを広げることで、今日のリフォーマーの原型が誕生したのです。


■ エルダーと製造業者が協力してきた歴史

現在私たちが使用しているリフォーマーは、ジョセフ・ピラティス氏のオリジナルデザインをもとに、彼の弟子たち(エルダー)とマシン製造業者との間で幾度も改良・再設計されてきた結果、形成されたものです。

「この部分はもう少しこうしてみたら?」「いや、ここは変えてはいけない」といった議論の末に、使いやすさや身体への適応性がバランスよく調整され、リフォーマーは次第に完成度を高め、現在の形になってきました。

ただし、現在では、ただの模倣や簡易的なコピー商品も市場に現れるようになり、本来の意図やエクササイズの原理を無視した設計のマシンも増えてしまったのは、残念ながら事実です。


■ リフォーマーの構造と運動原理

リフォーマーの構造は、以下のような主要パーツで構成されています。

  • キャリッジ(可動式の台)
    スプリングの張力により前後にスライドし、安定性とコントロール力を養います。
  • スプリング(バネ)
    負荷を調整するための主要構造。硬さや長さ、取り付け位置によってエクササイズの質が変化します。
  • フットバーとヘッドレスト、ショルダーレスト
    姿勢を保持するためのサポートパーツ。動作の精度に大きな影響を与えます。
  • ストラップとロープ
    手や足を使ってキャリッジを動かす際に用いられる。直接スプリングを引かず、間にこの構造を設けることで、力の伝達に“間”が生まれ、より繊細なコントロールが必要になります。

この「間」を意図的に作ったピラティス氏の設計思想には、身体の中心から末端まで、意識と動きがどう伝わっていくのかという、深い洞察があります。単に「引く・押す」ではなく、「動きの質と意識の繋がり」を体得するための構造なのです。


■ スプリングは多ければ良いわけではない

近年は、多様なスプリング構成や調整機能を持つリフォーマーも登場しています。
しかし、重要なのは「数」ではなく「意図」です。

ピラティスの目的は、筋肉を大きくすることではなく、「正確に動き、意識的にコントロールする力」を養うことにあります。必要最低限の負荷の中で、いかに深い感覚と安定性を養えるか。スプリングのセッティングひとつで、その目的は大きく左右されます。


■ マシンはエクササイズを理解して設計されるべき

リフォーマーに限らず、ピラティスマシンは「動き(メソッド)」を理解した上で設計されるべきです。
しかし、近年ではデザイン性や商業性を優先し、実際のエクササイズを知らずに作られたと感じるマシンも見受けられます。結果として、本来の目的を達成しにくい構造になってしまうこともあるのです。

指導者としては、そうしたマシンの「本質」を見極める目も必要になります。どのような素材で作られているのか、キャリッジの動きは滑らかか、フットバーの位置は適切か…はあまり重要ではなく、私はそれにより、どんなエクササイズで乗る人に対して効果が得られるの取ろうかという指導の精度に直結する大切な要素です。


■ “生活の中にあるリフォーマー”という思想

ピラティス氏が作ったオリジナルのリフォーマーには“蓋”がついており、普段はソファのように見える構造になっていたといいます。
生活空間に溶け込みながら、必要なときにはトレーニング機器になる。その発想は、日常と運動を切り離さず「日常生活そのものを改善する」という、ピラティス氏の哲学を象徴しているように思えます。

そしてもう一つ忘れてはならないのが、彼の父が鉄の職人だったという背景です。クラシカルなマシンの中には、アルミやスチールで作られた無骨なものも多く見られます。一見不安定に見える作りが、実は「不安定だからこそ、自ら安定させる力を引き出す」という、まさにピラティスの教えそのものを体現しているのです。


■ ピラティス氏なら、今のリフォーマーをどう見るか?

時折、私は考えます。
ピラティス氏が現代のリフォーマーを見たら、何と言うのだろうかと。

「いいね。でも、が、まだまだもっといいものが作れるはずだし、改良の余地はある」
そう言って、また新たなアイデアをスケッチしていたのではないでしょうか。

ピラティスとは、まさに“生きたメソッド”。
変わらない本質を保ちながら、環境やニーズに応じて進化し続けることが、その在り方なのだと、私は思っています。


■ 最後に

リフォーマーは、ただの「道具」ではありません。
その形状ひとつ、スプリングの感触ひとつに、メソッドの深い意図が込められています。

だからこそ、私はこれからも「エクササイズありきのマシンづくり」を大切にしているメーカー様を支持し、そして、それを理解し選び取れる指導者でありたいと思っています。

リフォーマーというマシンに敬意を持ち、その背後にある思想や歴史にも目を向けること。それこそが、本物の指導につながる第一歩だと、私は信じています。


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