「引き上げ」とは?
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「引き上げ」とは? 〜ダンスや運動で求められる身体の使い方〜
「引き上げ」という言葉は、ダンスや運動の場面でよく使われますが、具体的にどうすればよいのか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
「お腹を高い位置にキープする」「背を高くする」「脊柱の間を広げるように意識する」など、さまざまな表現で説明されることがありますが、実際には 抗重力筋 を使いながら、脊柱を伸長し、軸(重心)の位置を高く持つことが「引き上げ」の本質です。
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「引き上げ」と重心の関係
人間の体は、物理的には 重心を下げると安定する ため、本能的に低い位置で安定させたくなります。しかし、ただ重心を下げるだけでは、体がどっしりと固まってしまい、スムーズに歩くことができなくなります。
私たちが歩くとき、前に進むためには床をしっかりと 蹴る ことが重要です。この「床を押す力」があるからこそ、前へ進むことができ、同時に身体を上へと 伸長 させることが可能になります。
つまり、「引き上げ」は単に重心を高くするのではなく、 床をしっかり押しながら、脊柱を長く保つ ことで生まれるものなのです。
「引き上げ」のポイント
1. 肋骨の引き上げ
- 脇下の肋骨(あばら部) を脇下から腕を支えるように持ち上げる。
- 支柱がポールを支えるように、下から引き上げるイメージを持つ。
- 前側は胸骨を上向き加減に して、自然に引き上げる。
- ただし、反りすぎないように注意。
- 鎖骨は両端に向かってなだらかに下がりながら広がるように。
- 肩をすくめず、胸が自然に開く状態をつくる。
2. 骨盤の引き上げ
- 骨盤は後ろにスライドしながら沈みやすい ため、少し前に持ち上げる。
- 股関節にヘルメットを被せるように引き上げる イメージを持つ。
- ズボンを引き上げるように「骨盤の前頂上部」だけを引き上げると、お尻が上がって股関節が引けてしまう。
- これを防ぐために、 恥骨をほんのり前に出すように意識 する。
- 骨盤を根こそぎ斜め前に持ち上げるように すると、バランスよく安定する。
3. 床をしっかり押す
- 立っているときも、動いているときも、足裏で床をしっかり感じ、押すように意識する。
- これにより、下半身が安定し、上半身が自由に動きやすくなる。
ピラティスにおける「引き上げ」とニュートラル
ピラティスでは、 脊柱を引き上げ、脊柱のニュートラルを保つことが重要 です。これは、ピラティスの基本である「ボックス」(肩・骨盤の安定した位置関係)の考え方にもつながります。
しかし、ニュートラルな脊柱を見つけることは、意外と難しいものです。なぜなら、人それぞれの 姿勢の癖によって、何が「ニュートラル」なのかを正しく認識するのが難しいからです。
まずは 自分の体を知ることが大切 です。そのうえで、どのように脊柱のニュートラルを取るかを ピラティスインストラクターとともに考え、試してみることが最も重要 です。
ピラティスの動きを通して、自分の姿勢や使い方を見直し、無理なく「引き上げ」ができる状態を目指していきましょう。これができるようになると、運動のパフォーマンスだけでなく、日常生活の動きも大きく変わってくるはずです。
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